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おもと

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今年のおもと3冠王

10月末のおもと展示会で、ある有名なおもと趣味者のお話をお聞きする機会がありました。「佐藤さん、今年は今日で3冠のおもとがそろったから、もう棚入れは十分。あとは心穏やかに展示会を鑑賞できるよ。」とおっしゃっていました。その3冠とは......?

1:楼蘭
やはりというべきか、そこに行きますかというべきか。既にお持ちの1本だけでは物足りないということの様です。そういえば、以前その方に楼蘭だけで一枠5鉢持ってみたらと勧められたことがありました。下手な実生(失礼!)を持つより大名品の覆輪を、ということかもしれません。他のベテラン趣味者のお棚にも楼蘭が複数あるという話も聞こえてきます。殖えてくるのを気長に待っていると棚入れせずにお迎えが来てしまうかもしれません。
「いつ買うの?今でしょう!」
逆に楼蘭を殖やして気前良く手放せる方は、次の棚入れを有利に進めることができそうです。

2:文晁
新登録後、展示されることもほとんどなく、殖やせ殖やせが続いているおもと。
かのベテラン趣味者にもようやくお棚入れとなりました。評価が強すぎると感じた時には、無理せず縁があるまで辛抱することが大切だということを教えていただきました。東京支部展の時に関東の隠れた名作者の文晁の写真を見せていただく機会がありました。新登録の時のイメージと異なり、幅広の歯を多数重ねていました。
「文晁、侮りがたし...!」

3:祇王
故安達氏の棚じまいの時に3本だった祇王も少しずつ殖えてきている様です。
今回、東京の殖え木を取引する場に居合わせただけでも幸運でした。安達氏以外には東京のm氏やt氏が何度か展示会に出品していますが、いずれも超堅作りで一般の趣味者には良さが理解されていません。長野のs園が「もうちょっと作をかけて幅広の葉を出さないと、モノの良さが出ないよね。」と言っておりました。
今回棚入れをされた先輩なら大丈夫。きっと、祇王の見本木を作ってくれるでしょうから。

私にとっての3冠王

次は、私にとっての今年の3冠について述べたいと思います。例年通りの芋吹きを作り、50本ほどは業者の方に引き取っていただきました。その交代用員として数本の芋吹きをいただき、自前の殖え木で残したもの、別荘からの里帰りなどを含めて、30本ほどが新しい培養に備えて春を待っています。けれども、
私にとっての3冠とは、それらのことではありません。

1:谷風覆輪
新登録をさせていただいてから、覆輪の木のみを残して慎重に培養し、ようやく殖え木をコンスタントに出せるようになりました。東京、長野の両s園にも義理を果たせましたので、今年は別の業者の方にお譲りしました。今年は長野の名作者mさんの所で美術品ができています。これを展示会に出品して頂けると、今後は覆輪の谷風を所望される方も増え、今年の殖え木も良い縁談が舞い込むと良いなあと思っています。丸止、柚子肌、総雅糸龍の羅紗獅子。上作できると人気の太陽が獅子になったように見えるでしょう。

2:大丸実生
三河の実生で、頭木1本ものを東京s園より棚入れした木です。仮称の由来は、見染めた場所が東京のデパートでの展示即売会だったことによるものです。
2本芋吹きを取ったところで親木は平野さんにお譲りすることになりました。(昇天したという意味です。)
1本を自宅で、もう1本を別荘で培養してもらうことにしました。
自宅の木は春に芋を切り、別荘の木を見本木にという算段をしました。ところが、今年に限って別荘の作が良くありません。しまったと思いつつも、自宅の頭木を何とか見られる形にして、今年の芋吹き2本とともに東京のs園に持ち込みました。慎重に事を進めるs園は、別荘の木も実物を見たうえで商うことにしました。幸い、「良い木だ。」という評価を得て、2本の木の輿入れ先がまとまりました。なんと、日本一と言われる埼玉のsさんと、東京の有名人風天の(?)kさんに培養して頂けるようになったそうです。おもと冥利に尽きる大丸実生、s園よりサンゲンという仮称ではどうかと言われました。「三玄」という意味だったようですが、この名称の実生は別にあるため、名前は宙に浮いた状態です。個人的には「三弦」もいいなとひそかに思っています。

3:神奈川のkさん
彼も私も、子供の頃よりの植物好き。おまけに「軽く行きましょう。」と声を掛け合いながらもいつも午前様の酔っぱらい。おもとについて語らせると、ついていける人間は日本中を探しても数えるほど。運命の出会いをしてしまった二人はまさに「藁灰の友」。
ただし、好みのおもとは重なる部分が少なかったように今まで思っていました。
なにしろ、「胸の大きい女はバカだ。」(私に聞き間違えだったらごめんなさい!)という考えをおもとにも適用しているように思えたからです。好みのおもとは、細葉、姿と地合が良いを主体としていたからです。
そんな彼が、今年の東京支部おもと名品展において本領発揮。雛壇3点、安達賞2点の快挙。希少品種の『鯱』を除く4品種は私も培養しているのに、まったく別世界の作品を見せてもらいました。本当におめでとうございます!
忙しい人に仕事を頼むとうまくいくといわれますが、おもと作りも同じのようです。厳しい時代の社長稼業、一服の清涼剤をおもとに見つけての培養、流石です。
悔し紛れに「奥さんの水かけがうまくなりましたね。」というのが精いっぱい。
今後はお互い、藁灰の飲みすぎに注意して長くおもとを楽しみましょうよ。芸は身を助けるそうですが、凝ってしまうとランセットの介錯(首切り)が待っていますから。

(注)藁灰のことを灰汁とも言い、アクと読みます。これは、濁り酒を清酒にする際も使用されました。

 


樅の木は残った

皆様、ごぶさたしておりました。
久しく更新していなかった「おもと」についてのコメントを書きます。

以前より、おもと協会報「萬年青」、東京支部会報「東雲」、おもと業者組合編「萬風展記念帖」等に原稿をのせていただいております。ありがとうございます。
私のおもとに対する見方・考え方が多くの「萬友」に伝わるのはとてもうれしいことなのですが、文章に対する考え方の相違、もしくは単なる誤字・脱字によるのかは不明ですが、主に文末の「てにをは」、「句読点」の位置などが筆者の了解を得ずに(諸事情によるとは思いますが印刷前にチェックさせてもらえないので)変更されていることが多々あり、常々残念に思っていました。(私は文章中によいんを含ませたいために、よく句読点を入れたり、改行しているのですが、これを一文につなげるために助詞を入れたり、同一段落に編集されていることが多いのです。)

今回、協会報「萬年青」180号においては一番サビの部分(「水戸黄門」でいえばいんろうを出すシーン)がカットされるにいたり、とりあえずHPを見ていただいている方々だけでも真意をと思い、筆をとりました。
(事実、数人の萬友から「なぜ、考え方が変わった?」「宗旨変えしたのか?」「野党から与党につられたのか?(政治家のようにポストや権力が欲しいのかという意味)」等の声がかかりました。)
ただし、本文は特定個人や団体を非難するためのものではなく、あくまで原文を発表したいという思いから出たものです。皆様ご理解下さい。
なお、題名の「樅の木は残った」とは、幼い頃、おそらく初めて見た(記憶に残っている)NHKドラマで、その結末部分の意外性が成人するまでずっと心にひっかかっていたため、その心境を題名とさせていただいたものです。


生え当才、石藤正靖実生
戸田大車×英宝既に、気品の芋吹きの相あり。世が世なら、・・・・・。「七貴」の当才のイメージと言ったら言い過ぎだろうか。

生え2才、久光実生 大車×DKA
初葉に二面竜の予兆あり。今年の芸次第では・・広葉、紺性、地合いは◎。

生え5才 福原実生 T×(V×A)
幻の「天壇」をイメージさせる実生。プロの評価も高い。


『樅の木は残った』
東京支部 佐藤 彰紘

■実生の意義
皆様ご承知の通り、おもとには実生という分野がある。それゆえ山取りに頼らず新種が生まれ、自然破壊を伴う他の伝統園芸とは一線を画している。
私も実生が好きで、毎年わずかばかりの種を蒔き、また、生え実生も縁があれば棚入れして楽しんでいる。多くはあと一歩特徴がなくて、「良い実生なんだけど…」、「面白い実生ですね…」で玄人の棚に殖芽がまわり、「いつの日」かを夢見ることになる。既存の品種を超える品種はなかなか現れない。
それゆえ、長年にわたって名鑑に君臨する登録品は貴重品である。最初に手がけた人の誰かに培養ミスがあったなら、この世に存在することなく、皆様に競作されることもなかった。
過去の写真集を見れば、将来を嘱望されつつも、所有者の培養ミスによって絶種したおもとが多数あることが分かる。それを考えると、実生家の棚で作出されながら世に出ることなく生を終えた有望品が、過去にどれほどあったであろうか?

■東日本大震災
私の棚に混じって、宮城や福島の萬友から託された生え実生達がある。いずれも大震災より前に棚に入ったおもと達で、これらが実生家の棚にあったなら、すでに生き残っていなかった可能性もある。
これらを無事に育て、素質が皆様に認められたならば、登録という形で次世代へとつなぐことが東北の仲間達の思いを受け継ぐことになる。特に、私の出身地である福島では、原発問題が復興の前途に大きな壁として立ちはだかっている。
「宇宙戦艦ヤマト」の放射能除去装置がほしい。(おもと界では分からない話かもしれませんが。)
それでも私は夢を見ている。戦後と同じくおよそ20年後には「仙台オリンピック」を開催したい。その会場にはおもとを添えて。そしてあわよくば、「全国大会」という形で。

■公益社団法人
かつて、高田好胤師が薬師寺金堂再建の写経勧進の際に言ったという、「我が身一つ打たれたとて、何ぼのこと」。おそらく同じような想いで「おもと協会」を守っている人がいる。

他方、個人の趣味で「おもと」の種を蒔き、「自分一代限り」と楽しむ人がいる。それは全く個人の自由であり、何人もそれを妨げることはできない。けれども、「おもと」を未来の子供達のために「おもと協会」に残し、伝統園芸の「萬年青」に昇華していただけないものだろうか。
おもと界には、他の植物と比較しても多くの記録が残されている。おもと界が続く限り、おもと界の人々は記憶の中で生き続ける一個人の思惑を超えてを生かす」生き方を考えていただきたい。
かつて「戦術ばかりで戦略なし」と語った万友がいる。その答えとして、今回の大惨事を経てやっと見えたものがある。「人はいつ死ぬか分からない」。
各人が己の思惑のみで戦術に頼っているようでは、子供の代にさえ「萬年青」を残すことは困難となろう。「趣味のおもと」となっては、どれほどの価値が残るだろうか?ここに至っては、滅亡に瀕した「おもと界」を存続させることのみが戦略である。
集え!公益社団法人日本おもと協会の旗の下に。

人生意気に感ずとは言ったものである。

(注)「樅ノ木は残った」
徳川幕府の取り潰しの陰謀から、命をかけて仙台藩を守った原田甲斐を描いた山本周五郎の歴史小説。

第65回おもと名品展

第65回おもと名品展

平成8年以来、14年ぶりに東京で「おもと」の全国大会が開催されます。植物や美術に興味のある方はぜひご来場下さい。当院院長佐藤も会場スタッフとして参加しています。

詳しい内容はコチラ>>

縞羅紗に夢を

今回のテーマは実生の選抜についてです。キャリアも浅く、たまに当才実生で三光園社長に挑戦しても全敗の私の話ですから、軽く読み流して下さい。

1.生え当才
①宝くじ
一番難解な分野でしょう。定説はないと言えます。私の場合、自分の好きな決まり物の芋吹きの形を参考にしています。自分で多くの芋吹きを作り、その特徴と同じと思った生えにアプローチしています。本格的におもとを始めたのが昭和の終わり頃だったため、比較的新しい品種の芋吹きしか見ていないところが逆に強みです。(苦しい言い訳…)

②生え実生「ベカラズ集」
イ.
「円空」のような立派な葉が4枚以上出ている生えはまず大成しない。昔は特別最優等になるのはこの形が多かった。葉肉のある多芸品は葉繰りが悪いものである。
ロ.
芸足を信用しすぎない。
初葉のみに注目すると、後でガッカリすることが多い。ただし、止め葉に向う程、期待は大きくなる。
ハ.
優等生えのみを選ばない。
銘品の芋吹きにも例外がある。「力和」の葉肉、「玉賜」の紺性を思い出して欲しい。

③実親をチェックする
厳しい葉芸同士をかけ合わせると先祖返りしてしまうようで、オス木は「葉芸」メス木は「おおらか」が良さそう。
「ⅴ」や「祥宝」などは見かけはさっぱりだが、内に激しい「情熱」を秘めているようだ。また、気難しい実親は縞はあってもオス木のみで使った方が良く、メス木にすると弱って絶種の危険すらあると思う。(「吉小」「仁兵衛大宝」「祥宝」など)

2.2才以上
①2才木
葉芸よりも地合を重視する。「葉肉は雅糸龍ではなく尉斗葉でこそ目立つ。(三光園)」の言葉は重い。雅糸龍だけの木だったら、覆輪のない「太楽」の葉肉を超えるか葉繰りで優るか、いずれにしてもかなりせまいレンジの勝負になってしまうだろう。

②親木
生え実生の若親ほど「心のときめくおもと」はない。所有者の期待は周囲の思惑をはるかに超えることも多いと聞く。ただし、かなり多くの見込品が既存の名品(決まり物)に似ていることが多い。覆輪がまわれば区別がつかなくなるかもしれない。そこで、「業者に見せるともっていかれてしまうからイヤだ。」と考える実生家の方々に言いたい。「富国殿」「聖雲殿や峻嶺」「静山や天元」「鸞山」「力和」「旭翠」、これらの青や縞の木を自分の棚で作って自慢の実生と比較していただきたい。覆輪の木と比較してはダメである。越えられなければ残念ではあるが自分の世界で楽しもう。
けれども、細葉で葉重ねが良い実生は、まだまだ未開発の分野と思われるので、美術品まで作り込むことをおすすめする。

③品評会
どの程度の実生か不明でも美術品になったら品評会に出してみよう。できれば「実生会」ではなく「萬風展」が良いと思う。目きき(と思い込んでいるだけ)の趣味者にコメントを求めれば、業者さんよりは素直な答えが返ってくるだろう。

3.激辛
「おもと」も他の伝統園芸と同じで、行く末が「バラ色」とは言い難く、業者と趣味者が協力して新品種を発掘していかないと、再浮上は困難である。おもとは、山取りや突然変異に頼らずに新品種を作出できる数少ない環境に優しい伝統園芸である。いくらおもとが好きでも「自分だけの趣味」だと言って、有望な生え実生をかかえこんでしまう人が、結局は「おもと界」を小さくしているのではないだろうか?箱根駅伝に人気があるのは、懸命に一本の「タスキ」をつないでいくからである。

4.最終ハードル「覆輪」
最後に「覆輪」がまわるとズッコケるおもともある。大資本を投入した「期待の新薬」が未承認になるようでつらい。そのことを考慮すると「覆輪」がまわるまで高値をつけないというのは正しいが、キャリアの長い大棚におさめるのは「覆輪がまわる前しかない」というのもまた真実である。

5.受け継がれる意思
ヒルルク「人はいつ死ぬと思う?
心臓をピストルで撃ち抜かれた時……違う。
不治の病に犯されたとき……違う。
猛毒キノコのスープを飲んだ時……違う!!!
…人に忘れられた時さ……!!!
おれが消えてもおれの夢はかなう。
病んだ国民の心もきっと救えるさ…!!
なぜ泣くドルトン君?」

ドルトン「……国も……!
同じだろうか……」

ヒルルク「……エッ エッ
"受け継ぐ者"が……
いりゃあな……」

ヒルルク「まったく!!!!
いい人生だった!!!!」

「『ワンピース』巻十六  尾田栄一郎」より

文晁

今までは自分が保有しているおもとについてのみコメントしてきた。それは、良く言えば日々の実感、悪く言えばポジション・トークとなる。今回は敢えて新登録品をコメントする。まだ、評価するには早すぎると言うのが正しいが、早期にコメントするというリスクを買って読んで下さい。

今回の「文晁」は、聞くところによるとまだ5本物で、親木はまだ1本のみである。今年私が目にしたのはこの親木、2才木、当才芋吹きの3本である。親木の姿はインターネット上で公開されているので、そちらをじっくり見ていただきたい。
以下、おもと業者3人のコメントを記す。

東京のS園: 今年の新登録では、これでしょう。
楼蘭のようになるんじゃないかな。殖え木は新根が止まっていて、それが伸びるのを待って全国大会に持ってくる予定なので、それを見て下さい。
(ウワサではオーバーハンドレッドとのこと)
長野のT園: どんなもんかな。いくらなんでも50~60万くらいのもんでしょ。売り物があるの?
長野のS園: 今年の新登録ではこれが一番でしょう。全国大会で割り子を渡してもらうことになってるんだけど。まだ新根が出かかっている所なんで動かさない方がいいと思って。今年の殖えはどれも縞覆輪でね。この割り子が一番縞が沈んでますよ。けっこう強いこと言われててね。60~70万じゃないかな。

程々の期待を胸にして全国大会にでかけた。
「文晁」は親木と2才木が出品されていた。
敢えて誤解を恐れずに以下コメントを記す。

たしかに親木の稚葉は雅糸竜がそろっていて見事。葉重ね、葉姿、葉型とも良い。ただ、数枚伸びている本葉が物足りない。大きさやラインは違うが「華厳」型、2才木に目を移すと、縞が沈んでいるため、地合が良く見える。力和の2才程で特別地合が良いわけではない。親木で良く見えるのは縞があるからではなかろうか。参考品席にあった「聖」の方が地合が良い。心の中に価格を入札してから、2つのS園に声をかけた。
しかし、殖え木の1本は150万で九州に渡ったというが、残りは不明で、とりあえず箱根は越えなかったらしい。
来年に2才木の芋切りが予定されているらしい。(親木は不明)しかし、ウワサの価格では上京は難しく、「悟空」のように西日本の特産品になってしまうのではなかろうか。我こそはという方は九州のR苑に申しこんで見てはいかが?

酔師(すいし)

もうかれこれ10年以上前になるだろうか、ベテラン・若手の混成チーム10名程で岩手県盛岡のおもと仲間を訪問した。
とても楽しい思い出の旅行だったが、何より酒量が半端ではない。
行きの新幹線ですでに缶ビール20本と焼酎2本。盛岡での昼食時に現地の方と合流してビール20本。
夜の宴会はさらにすごかった。わが人生(他の多くの方もそうではなかったろうか)最大級である。12名でビール2ダース、日本酒の燗20本、焼酎5本。他にもワインもあったか。長老の「お姉さん、残ったゴハンはおにぎりにして部屋に持ってきて。」の声にまさかと思いつつも、部屋で2次会。新潟出身の自衛隊木村さんのザックから「八海山」が登場。
1.8Lは各自のコップ酒であっという間になくなった。翌朝、多くのメンバーの思いは同じだったに違いない。「こんな奴らと一緒に飲んでいたら殺される。早死にする前に逃げ出そう。」とはいっても、その後もたびたび合同旅行は続いたのではあるが…。
翌朝も、朝から「いいちこ」、昼もビール、夜東京に帰ってからも反省会といってまた宴会。サルよりタチが悪い。

前置きが長くなった。2日目に実生家阿部氏の棚を訪問したときのことだ。当時は新人らしく(?)おとなしくしていた私にKさんが声をかけた。「おー、アキチャン。どれが欲しいのよ。」特にありませんと答えると、Kさんはプランターに寄せ植えになっている親木を指差した。「これからもらえば?」といいつつ数本ピックアップした。「いくらお支払いすれば・・・」ととまどっていると、Kさんは「青は1万」と高らかに宣言した。
さすがベテランである。見かけは青でも交配は縞木のハズであるから縞含みの可能性がある。3本持ち帰ったうち、一番芸の強い木に縞が浮いてきた。当時のイメージでは新生殿よりインパクトの強い総ガシの木だった。その後縞のある木を数名に分けたものの、何故か傷みが入り、育っていない。
Kさんの口癖は「わが軍団は・・・」であったことからなつかしさをこめてこの実生を「酔師」と呼んでいる。
現在私の棚に3本あるが縞は沈んでいる。今年の秋には信州に疎開させて一発逆転を狙ってみたい実生である。

桂林

平成7年、初めて「生え実生」に手を出した。
有名な実生家、松岡氏の生えを5本セットで緑風苑の吉田哲夫氏から買った。選ぼうとしたら「実生は一本抜いてはダメ。まとめて買うこと。」と言われ、その通りにした。将来の参考にと思い、1~5位の順番をつけてみた。その後の成り行きは…。

・1位: 丸葉で地合の良い実生だった為、将来性一番と見たが、ゆるい雅糸竜を出す程度で、6才のとき大白園の平野さんにお譲りした。
・2位: 2才で葉肉・芸とも有望だったが、いかんせん縞が明るすぎて3才で没。3位と5位は2才で薄葉に転じてしまった。
表題の木は4位だった。
人気のO×Aの交配だったが、当才から細葉だった為強いインパクトのない実生だったと思う。成長するにつれ、細い直刀型の中立葉で熨斗葉、二面竜の葉芸を乗せる、いわゆる熨斗二面系のおもとになった。ただし、である。葉先は丸止め、葉肉は極めて厚く、いわゆる板地ではなく、荒れ地である。
今のところ、葉繰りがあまり良くないが、葉数がそろえば「小型の殿様」になるのでは?と思い、個々の葉の形から「桂林」と名づけた。

現在、神奈川のK氏の所に頭木と今年の双吹きの計3本。T.F氏の所に親木1本。本家の私の所に若木1本(芽当たりが多いため早く殖えるだろうと油断して親木をダメにしてしまった。)総計5本である。

K氏の木の昨年の葉は初めて見る型だと思う。
昨今人気の広葉総雅糸竜タイプではないが、「型変りこそ実生の神髄」。そう考えて棚の一角を占めている、当家最古参の実生となった。

推敲(すいこう)実生

●思い出
今から10年程前、「縞羅紗おもとの帝王」安達氏が、私宅のおもと棚を見て1本の実生に目を止め、交配名を所望された。ラベルを手にとると「ON×BO10」とある。
これは後に「翠鼓(すいこ)」と名付けた実生である。
安達氏は「この交配はうちにある「一鼓(いっこ)」というおもとと同じ交配(おそらくは同じ房の実兄弟)で、このBO10という実親はオス木として優秀だと思う。メス木のONは大車のN番ということらしい。この実生(後の翠鼓)に縞が出たら、分けて欲しい。」と話された。さっそく、同氏とともにBO10を入手し、交配するようになったことを昨日のように憶えている。当時ONはまだ入手していなかったため、同じ大車系の「周作」をメス木として2年交配したように思う。
表題のおもとはこのときの生え実生だ。

●名前の由来
とある山中の温泉宿での宴会後半の出来事。
世慣れた方なのか、何かにつけ、話半分~千三つで人のおもとの話を聞くような、一歩引いた感のある、バランス感覚にすぐれた大人の某おもと業者氏。何事においても自分で試してからでないとそのおもとの良し悪しを口に出さないが、一度見当をつけると直進する性格の小人の私。
この2人が同席していた。某おもと業者氏は、私が熱弁(?)をふるっている最中にまぶたが重くなっていく。それを見て「BO10の優劣を検証中に居眠りとは何事か。」とばかりに業者氏の背中を押す(敲く?)私。
そんなことが何度も繰り返された一夜。あたかも「推敲」の故事のようだったため(?)その出来事にちなんで「周作×BO10」の実生を「仮称:推敲実生」と呼んでいる。

●将来性
現在、総親と2才、当才の割子の計3本。2年連続で子を上げたためもあって、親木の芸はまだまだこれからといったところ。小型ながら末恐ろしい程の肉厚のノシ葉と、「九品」や「聖貴」に通じるような細葉の変わりガシ竜を2年連続で出している。そこに将来を見込んで大切にしている。
超マニアの作品展に出品するも、他の参加者の反応はない。あと数年でどう変化するか。親木の子上げが止まってからの勝負である。

夢実生(ゆめみしょう)

まずは年明けにふさわしい1本を紹介します。

昨年の全国大会の翌週、若手おもと業者の方々ごくろうさまの意を込めて、上野グリーンクラブを訪問した。昨年の不作の影響もあって、なかなか入手したいおもとがみつからない。ふと棚下を見ると中村園が実生をならべていた。
いくつかを手に取り、園主の説明を求めた。その中の1本が題名の木である。

ふっくら丸々とした四枚葉の上芋吹きだった。園主いわく、「これは親父の頃からある実生でなかなか作がかからなかったんですよ。(イメージで言うと)鸞山(らんざん)と峻嶺(しゅんれい)をたして2で割ったような木で、昨年(平成18年)初めて覆輪の苗ができて地元の名作者に納めたのが倒れてしまったんです。今回の苗の親木は片覆輪で、この吹きが一番覆輪に近いかな?親は凝ってしまったけれど、巖武(げんぶ)のような葉を出してますね。」
「その口上、気にいった。うまいね。それ、もらうよ。」
「ありがとうございます、佐藤さん。でも、私も楽しみたいので、半分だけにしてもらえますか?」
「業者らしくなったね。それでいいよ、作らせてもらうよ。」
名前がまだなく、アルファベットでKTとだけある実生。日強く作られたためか下葉が日焼けして切った跡がある。
紺性もとんでいるが荒れ地で丸葉。葉先がツンとしていて、そして何よりトイが深いのが気に入った。園主中村夢弥さんの体型通りのアンコ型、そのイメージでかってに「夢実生」とよばせてもらおうと思う。

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